お薬漬けのdiary

薬剤師によるブログ。在宅医療メインで薬剤師してます。いろいろなことに興味があり、特にビジネスの側面からのお話が多いかも?

薬剤師の反応?薬剤師を混乱に陥れた??”かかりつけ薬剤師”制度について。#かかりつけ薬剤師 #調剤薬局

少しサボっていたので、更新頻度を少し上げています。

きっと、また落ちるかもしれませんがご容赦・・・。

 

さて、タイトルの内容 ”かかりつけ薬剤師”の制度は施行前からもいろいろな憶測が飛び交い、施行後はいろいろな思惑の中で物議を醸し出しています。

かかり薬剤師制度というのは、単純に考えればなんてことない薬剤師の機能評価の一つに過ぎないのですが、これまでの調剤報酬(要は国が薬局に支払う歩合)が薬局(≠薬剤師)の機能評価だったところに薬剤師(個人)に対しての評価になったもんですから、ことを余計にややこしくしてしまってます。

 

ちなみに ”かかりつけ薬剤師” の主な算定要件はこちら。

● 患者の同意(患者が選択した保険薬剤師をかかりつけ薬剤師とすることの患者署名付きの同意書を作成など。患者1人に対して、1 人のみがかかりつけ薬剤師として算定できる。)
●薬剤師として3年以上の薬局勤務経験。同一の保険薬局に週32時間以上勤務&当該保険薬局に半年以上在籍していること。
●薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得していること。
● 医療に係る地域活動の取組に参画していること。
● 患者から 24 時間相談に応じ、開局時間外の連絡先と勤務表を患者に渡すこと。ただし、やむを得ない事由により別の薬剤師が対応しても差し支えない。

そんな、混乱の状況をある薬剤師コミュニティーから抜粋してみました。

 

薬剤師Aさん 女性

幼な子を抱え、週2回働く薬剤師がいます。彼女を大好きな患者さんが数名居ます。疑義照会をしっかりし、検査値から薬の処方変更を提案したり、残薬の確認をし、処方量を減らしています。シールがないし、就業時間も足らないので、かかりつけ薬剤師の請求はしません。当薬局では今まで通りの業務を続けます。無意味な研修会には出席しませんし、無理な働き方はしません。

シールがないというのは研修終了の証明シールのこと。1コマ1点、研修が長いと3点などの場合もあります。請求というのは、かかりつけ薬剤師費用を上乗せしないということですね。

薬剤師Bさん 女性

制度改革に真っ向反対するつもりはないのです。そして、個人的に自分は「かかりつけ薬剤師」になることはできるのかもしれません。
ですが、一人の患者様を常にスタッフ皆でサポートしているのが薬局とおもいます。こんな、個人プレー的な仕組みは、若い人材も育たないのではないでしょうか?何よりも、チーム医療の精神の基本からはずれているようにおもいます。「週32時間以上勤務」や、「地域貢献」、勤務時間以外も電話対応、となると、子育て世代パート薬剤師(35-45才)では、ほぼ不可能なことですよね。
ほぼ、女性は一戦しりぞけなさい、というようなものですよね。大学卒業の段階で24才以上の薬剤師。29-30で結婚出産して、しばらくかかりつけ薬剤師できそうにもない10年間がありそう。もしかしたら、子育ては、他の人任せですね。子育てを通してこそ、よき薬剤師へと成長する機会でもあるのに。

”個人”でどこまで設定(算定要件)をクリアするかという課題になったことへのご指摘です。組織はひとりひとりでできないことを分担し、さらには個々の能力が引き出されるもの。みんなの力が足し算ではなく、掛け算で発揮される。個から始まるのではハードルが高すぎる・・・?

確かに小児科での投薬では、ママ薬剤師さんの安心感はとても大きかったです。なんとか、そんなママ薬剤師さんの活躍が制限されないことを願います。

薬剤師Cさん 男性

今回は「かかりつけ薬剤師のいるかかりつけ薬局を点数的に評価する」ただこれだけのお話です。
厳しいと感じる方は、かかりつけ薬剤師を放棄するという選択肢もあります。かかりつけと認められなくても薬剤師は薬剤師であり薬局は薬局なのであって、普通に働けますよ。

そして「かかりつけ薬剤師とは一体何か?」と言うのはまた別のお話です。

私は、かなりこの薬剤師さんと近い意見を持っています。実はかかりつけ薬剤師という言葉はこの制度より前からありました。患者さんと1対1の関係で、よく患者さんの生活や家族環境などを知っていて、その患者さんにあったお薬の使い方を相談できる存在。いつも ”顔なじみの” 薬剤師さんが近くにいてくれるというイメージ。

しかし、制度でこの言葉を使ってしまったため混乱が起きているのが本当のところだと思います。

薬剤師は患者さんにとってどういう存在であるかが先で、制度に併せてやることを決めるのであれば患者さん本位の考え方ではありませんね。

(余談ですが、かかりつけという言葉は医師にのみ使われると辞書にあります。今回で薬剤師にも使用できるという現象が認知されました)

点数の総取りが可能だった業界

実は冒頭に申し上げた通り、薬局の評価は中の薬剤師に起因する要素はほとんどなく、どんな薬局であるか?という現状でした。その結果、保険薬局に認められる算定は、薬局という入れ物の整備を整えることが重要で、薬剤師さんの能力に起因するところはほとんどありませんでした。(無菌調剤などの希少ケース除く)

こんなに薬剤師さんの対応に密接でハードルの高い算定はなかたので、算定をしない薬局のほうが多くなるとすると、差別化が大きくなってくる要素になります。

また、制度に合わせて薬局を設計するという考えからも徐々に脱却していくかもしれません。薬剤師一人一人が、経営を考えたり経営者と ”薬剤師がどうあるべきか” という議論の機会が増えていけば、もっと業界への影響が出てくるでしょう。