お薬漬けのdiary

薬剤師によるブログ。在宅医療メインで薬剤師してます。いろいろなことに興味があり、特にビジネスの側面からのお話が多いかも?

医薬品の供給問題  地域が受け皿になるには #在宅医療 #地域連携 #地域拠点薬局 #介護 #調剤薬局

先日、考えさせられる出来事があった。
医療用の医薬品の安定供給の問題だ。
某フランスの工場の話なんかじゃなく、最も現場に近い調剤薬局から患者さんとの間での問題。

実は、調剤薬局業界は医薬品を薬局間で譲渡(売買)することが少なくない。次から理由をあげる、医薬品の種類の問題と現実的な取扱い方を解決する一つの方法としてだ。

ご存じの方も多いと思うが、現在医薬品は国内に何万種類も存在する。さらにジェネリック医薬品の登場により、異なる成分としての量×販売メーカー(ジェネリック)の数を決して下回ることはない。また、配合剤(多種類の薬を1剤にする)の登場により配合の規格を全てそろえるためには種類が増える。

例:医薬品A(規格 5mg 10mg 20mg)+医薬品B(規格 100mg 200mg)=5規格
  配合剤X(医薬品A+医薬品B)3P2 =6規格

現在3規格の医薬品が配合されている医薬品はないが、2規格同士だとしても4規格の用意となるため、規格数は変わらない。2種類の錠剤が1錠になるというメリットに対して、途中から容量の変更(例えば片方の規格だけ半分にしたい)に適さない、製剤の大きさが従来品より大きい、口腔内崩壊錠が存在しない、ジェネリックがなく割高なんてデメリットもある。

話がそれたので戻そう。
日に日に種類が増えていく医薬品の問題というのは実際に扱っている者には本当に頭を抱えることだが、その反面で医薬分業の発端には医師が自由に医薬品を処方できるとして推進してきた背景も支えなければならない。
この矛盾する点をどのようにやりくりしてきたかというと、門前薬局という閉鎖された状況を活用してタイアップの医院が処方する薬剤に限定して備蓄してきた。よって、しばし門前薬局以外に処方箋を持ち込むと薬がないという事態が引き起こされるのだ。
しかし、調剤薬局は特別な理由なくして調剤を断ることは認められていない。


■調剤の求めに応ずる義務 薬剤師法第 21 条 調剤に従事する薬剤師は、調剤の求めがあつた場合には、正当な理由がなけれ ば、これを拒んではならない。 □正当な理由 薬局業務運営ガイドライン(H5.4.30 薬発第 408 号 薬務局長通知)
ア 処方せんの内容に疑義があるが処方医師(又は医療機関)に連絡がつかず、 疑義照会できない場合。但し、当該処方せんの患者がその薬局の近隣の患者 の場合は処方せんを預かり、後刻処方医師に疑義照会して調剤すること。
イ 冠婚葬祭、急病等で薬剤師が不在の場合。
ウ 患者の症状等から早急に調剤薬を交付する必要があるが、医薬品の調達に時 間を要する場合。但し、この場合は即時調剤可能な薬局を責任をもって紹介 すること。
エ 災害、事故等により、物理的に調剤が不可能な場合。

 

 


そういったタイアップ以外からの持ち込み処方箋には、冒頭にも述べたように薬局間譲渡で解決されてきた。
冒頭で述べたように、薬局は薬局間譲渡によって矛盾を解決してきたのである。

と、前置きが長くなったりました。
先日の考えさせられる出来事というのが、この薬局間譲渡でも解決できないようなケースに2度遭遇したことによる。

1つ目は、PCAポンプを使用した医療用麻薬の調剤。
患者さんは、内服・貼付剤によるペインコントロールが不可能になり持続皮下を開始する運びとなった。がん患者の看取りにペインコントロールは中心医療となる。
他薬局で調剤はできなかった理由は「在庫がない」ことだった(実際にはほかにも要因はあると考えられる)

2つ目は、ノルスパンテープ(ブプレノルフィンテープ)の緊急処方。
Drはe-learningを直ちに受講し処方が可能になったにもかかわらず、卸に在庫はあるが卸すことはできない。メーカーからストップがかかったのだ。理由は事前登録が必要ということ。
基をたどれば、医薬品備蓄(この時点で必然的に登録は済んでいる)ができていればよかったのだ。

この2つから学ぶことは、患者さんの治療と医薬品供給体制にどれだけ大きく左右されるか。ということ。調剤薬局はどれだけ、医療の下支えをしているかを真剣に考える必要がある。
調剤報酬改定の予想として挙がっている、在宅医療を下支えする24時間開局薬局。この、24時間開局ばかりに目が行っているように感じるが、本当の下支えはそこではない。開局していることが大事なのではなく、医薬品の対応ができることが大事なのだ。

今回障壁になった問題は以下、
1、門前薬局の拡大による、各薬局の医薬品の偏り
2、医薬品供給体制の需要とのかい離(メーカー、卸の体制)
3、問題の掘り起こしと議論が十分にできていないこと

 
これらの要望は、今のところ自主的に薬局単位で備蓄を増やすしかない。
だが、過去にないほど規制のある医薬品の使用が広まった今、規制緩和や単一の大型薬局しか方法はないである。業界を動かす取り組みになるよう、一石を投じたいと思うばかりである。
今すぐにできるのは、1歩づつ問題に直面して患者さんのために結果を出していくことだけだけど。。。